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「羊をめぐる冒険」の翻訳(44)

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第五章 鼠からの手紙とその後日譚

1 鼠の最初の手紙(1)

                     一九七七年十二月二十一日の消印



元気かい?

もうずいぶん長く君に会っていないような気がするな。いったい何年になるかな?

何年だろう?

年月の感覚がだんだん鈍くなってきている。なんだか平べったい黒い鳥が頭の上でばたばたやってるみたいで、三つ以上ものが数えられないんだ。悪いけど君の方で数えてみてほしい。

みんなに黙って街を出ちゃったことで、君も少なからず迷惑を受けたかもしれない。あるいは君にも黙って出ていっちゃったことで、不快に思ったかもしれない。僕は何度か君に弁明しようと考えたのだけれど、どうしてもできなかった。ずいぶん多くの手紙を書いては破った。でもこれは当然と言えば当然の話で、自分にもうまく説明できないことを、他人に向って説明することなんてできるわけはないんだ。

たぶんね。



僕は昔から手紙を書くのが上手くない。順序が逆になったり、正反対の言葉を間違えて使ってしまったりする。そして手紙を書くことでかえって自分を混乱させてしまったりする。それから僕にはユーモアの感覚が不足しているから、文章を書きながら、自分で自分にうんざりすることになる。

もっとも、手紙がうまく書ける人間なら手紙を書く必要もないはずだ。何故なら自分の文脈の中で十分生きていけるわけだからね。しかしこれはもちろん僕の個人的な意見にすぎない。文脈の中で生きていくことなんて不可能なのかもしれない。

今はひどく寒く、手がかじかんでいる。まるで僕の手じゃないみたいだ。僕の脳味噌も、僕の脳味噌じゃないみたいだ。今、雪が降っている。他人の脳味噌みたいな雪だ。そして他人の脳味噌みたいにどんどん積っていく。(意味のない文章だ)



寒いことを別にすれば、僕は元気に暮している。君の方はどうだろう?僕の住所は教えないけれど、気にしないでほしい。君に何かを隠したがっているというわけじゃないんだ。それだけはわかってほしい。これはつまり、僕にとってはとても微妙な問題なんだ。君に住所を教えたら、そのとたんに僕の中で、何かが変ってしまいそうな気がするんだ。うまく言えないけどね。

君は僕がうまく言えないことをいつもうまくわかってくれるような気がする。しかし君がうまくわかってくれればくれるほど、僕はどんどんうまくものが言えないようになっていくみたいだ。きっと生まれつきどこかに欠陥(けっかん)があるんだろう。

もちろん誰にだって欠陥はある。





第五章 老鼠寄来的信及其后话



1 老鼠的第一封信

                 邮戳时间1977年12月21日

  身体还好吗?

  已经很长时间没有和你见面了。这一晃过了多少年了?

  到底多少年了?

  对年月时间的感觉渐渐地变迟钝了。不知为什么就像扁平的黑鸟在头上拍打过来,对数量三个以上的东西,已经没有数数的能力。我已经这样不好了,想让你试着数数。

  对大家一声不吭地离开那里,你也不例外多少有些麻烦。或者说,我连你都不告诉而走出来,你对我这种做法也有些不快。我也想过几次向你讲清楚,但始终没有实现。因此就写了无数的信然后又撕掉。不过这是理所当然的,连对自己都讲不明白的事情,当然就不会向别人讲清楚的。

  大概就这样。

  

  我本来就不会写信。次序颠倒,错误地使用相互相反的语言。最终也使自己混乱起来。或者说因为自己没有幽默之味道,随着自己写文章,自己对自己也都厌烦起来。

  更重要的是,如果是能漂亮地写信的人可能也就没必要写信了。不知什么缘故理应在自有的文章中很好地活下去。当然这只不过是个人的意见。在文章中这样生存下去是不可能的。

  现在天气真冷,手已经被冻僵了。简直就不像是自己的手。自己的脑子也不像是自己的脑子。现在正下着雪,像是他人脑子中的雪。就像是他人的脑子那样在不停地堆积着。(真是没有意义的文章)

  如果不在意寒冷的话,我还是很好地生活着。你的情况怎么样呢?虽然没有告诉你我的住所,希望你不要太介意。对你想隐瞒什么的理由并不存在,但你还是想知道的。但这些对我来说是很微妙的问题。如果把住所告诉你,可能我自己就感觉到我自身就会有什么变化。实在是讲不清楚呀。

  你会感觉到,我越讲不清楚的事情你却总是很明白。而且你越是清楚我就会越不能很好地表达。这肯定是生来就存在的缺陷。

  当然谁都会有缺陷。

老鼠和主人公是什么关系的人呢?他能提供什么线索?有价值的情报?
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